「照柿」
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高村薫 著、講談社単行本版
高村薫の小説が大好きな我が母曰く、「彼女の作品は男女、夫婦の人間関係がよく描けている」 と。
母の真意は未だわからず。他の作品も読み込むしかない。
『いや、そもそも無理だったのだ。 もともと持っていたものを投げ捨てて、お前はいったいどこまで来たのだ。 青い色が好きだったのに無理に赤い色を着て、無理を重ねて、どこまで来たのだ。 これからどこへ行くのだ。 それが分からない。 持っていたものとは違う方向へ走り続けた今、自分はほんとうは何が好きだったのか、何が心地よかったのか、何が欲しかったのかも分からなくなっている。 これがお前だ。
お前は今はどこにおり、これからどこに行くのだ。 』
三十路を歩む男の内省。ドロドロとして重厚な、得体のしれない、触れてはならない精神の内幕。