フリョ記 −不慮なる旅記−【後編】
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「フリョ記」【前編】から続き
2月21日昼 函館駅ホーム 「何時に着くかわかりません!」
12時間近くも滞在した客車から追い出され、とりあえず駅の待合室で休もうと思ったが、6番ホームに早くも「スーパー白鳥」の自由席を求める列ができ始めている。発車予定時刻まで3時間もあるというのに。うんざりだがすぐに並んだ。
湯の川温泉には高級旅館しか見当たらないことを確認してきたNを呼び戻し、場所取りを代わってもらう。さっきの「弁当」では全く腹が足らなかったので、改札を出てラッキーピエロという函館名物のハンバーガー屋に行き、チャイニーズチキンバーガーとポテトフライを買い求めて引き返す。空はどこまでも蒼く、海峡の向こうが大荒れになっているとは信じられない。HAKODATE DOCKの大ガントリークレーンもよく見えた。
函館駅のみどりの窓口でとぐろを巻きまくった長蛇の列は待合室をも完全に埋め尽くしている。列に戻ってハンバーガーを腹に入れてしばらくした後、さっきの老夫婦が現れた。「はまなす」急行券を払い戻し、私が教えた通り、青森から秋田までの特急「かもしか」3号の指定券を取ってきたという。これから乗る特急「スーパー白鳥」22号の指定券は全部売り切れだったらしい。窓口の行列が大変だった、と言うや否や、「列を取っておいてくれたことにしちゃおう」とそのまま我々のすぐ後ろに入り込む。さっきまで、我々のすぐ後ろに並んでいた家族連れから「知り合いですか?」と、かなり険の入った感じで言われたが、Nと二人で「知り合いですよ、ホントに」と答えるしかない。まさか、追い出せますかいな。「知り合い何かなんでもありじゃんね…」などと後ろでブツブツ言うのが聞こえるが、気にしない。
函館本線は順調に動いているらしい。札幌から到着した特急「北斗」からも客が吐き出され、青森行きの自由席に続々と並ぶ。人々の列はグネグネと曲がって、最後尾は何処?という感じである。超懲長蛇の列。
Nとこのような悪天候時(のみ)における北海道新幹線の有用性について喋った後、12時30分、「スーパー白鳥」22号に乗務する車掌たちがホームに現れた。
青函トンネルの北海道側は、この列車に合わせて除雪が完了する。東日本側、津軽線は倒木除去と除雪が、列車の運行までに終わるかどうかわからない、だがとりあえず列車を動かす、と説明が行われる。最後に、「正直言って青森に何時に着くかわかりません」という発言があると、並ぶ客達から乾いた笑いが起こった。
もう笑うしかないってか。
数分後、入線してきた「スーパー白鳥」22号は8両編成だ。789系の基本編成6両に2両を増結している。しかし増えたのは指定席車であり、自由席車は元の2両のままだ。全くせこい商売をしやがる。この行列が目に入らんのかぁ!
指定席券は全て売り切れていること、指定席車両の扉から自由席車両に入らないようにとの放送が繰り返され、自由席に並ぶ客が粛々と車内に雪崩れこむ。後方からの圧力だけで中に入り、車内ではやや急いでNと隣り合った席を確保する。老夫婦もその後ろになった家族連れも、無事席に着けたようだ。貫通扉には指定席車両からの不法侵入を防ぐべく車掌が配置されている。あっという間に乗車率は200%を突破、それでも当然大行列の客を捌き切れず、指定席の通路も開放すると案内があった。窓の外の客がゾロゾロと移動していく。車内放送も続く。
「この列車は青森行きの始発列車です。正直申しまして到着予定時刻を案内することができません」
「現在青森では大規模な停電が発生しており、3万6千世帯で停電しております。しかしJR分の送電は確保いたしました」
「ご乗車がまだの方がいらっしゃいますのでもう少々お待ちください」
ホームに立ったまま、乗らない客もいる。次の列車の自由席の着席を狙うのか、それもなかなか賢いかもと思っていると、22号の次の列車である特急「スーパー白鳥」26号の運休が決まりました、と案内が入る。ホームに残っていた客も乗せ、ようやく函館を出た。13時5分のことである。
津軽線は現在除雪作業中で、沿線6カ所で倒木が支障しており、列車の遅れが見込まれる、通路にいるお客様は御手洗の使用に支障があるから詰めてくれ云々との放送が流れたのを聞いて、意識が飛んだ。寝不足もいいところなので当然である。
さっきまで、こんなに何時間も並んで席確保して何の意味がある、などとほざいていたが、考えが浅すぎた。これは座れないとキツい。
函館駅のみどりの窓口でとぐろを巻きまくった長蛇の列は待合室をも完全に埋め尽くしている。列に戻ってハンバーガーを腹に入れてしばらくした後、さっきの老夫婦が現れた。「はまなす」急行券を払い戻し、私が教えた通り、青森から秋田までの特急「かもしか」3号の指定券を取ってきたという。これから乗る特急「スーパー白鳥」22号の指定券は全部売り切れだったらしい。窓口の行列が大変だった、と言うや否や、「列を取っておいてくれたことにしちゃおう」とそのまま我々のすぐ後ろに入り込む。さっきまで、我々のすぐ後ろに並んでいた家族連れから「知り合いですか?」と、かなり険の入った感じで言われたが、Nと二人で「知り合いですよ、ホントに」と答えるしかない。まさか、追い出せますかいな。「知り合い何かなんでもありじゃんね…」などと後ろでブツブツ言うのが聞こえるが、気にしない。
函館本線は順調に動いているらしい。札幌から到着した特急「北斗」からも客が吐き出され、青森行きの自由席に続々と並ぶ。人々の列はグネグネと曲がって、最後尾は何処?という感じである。超懲長蛇の列。
Nとこのような悪天候時(のみ)における北海道新幹線の有用性について喋った後、12時30分、「スーパー白鳥」22号に乗務する車掌たちがホームに現れた。
青函トンネルの北海道側は、この列車に合わせて除雪が完了する。東日本側、津軽線は倒木除去と除雪が、列車の運行までに終わるかどうかわからない、だがとりあえず列車を動かす、と説明が行われる。最後に、「正直言って青森に何時に着くかわかりません」という発言があると、並ぶ客達から乾いた笑いが起こった。
もう笑うしかないってか。
数分後、入線してきた「スーパー白鳥」22号は8両編成だ。789系の基本編成6両に2両を増結している。しかし増えたのは指定席車であり、自由席車は元の2両のままだ。全くせこい商売をしやがる。この行列が目に入らんのかぁ!
指定席券は全て売り切れていること、指定席車両の扉から自由席車両に入らないようにとの放送が繰り返され、自由席に並ぶ客が粛々と車内に雪崩れこむ。後方からの圧力だけで中に入り、車内ではやや急いでNと隣り合った席を確保する。老夫婦もその後ろになった家族連れも、無事席に着けたようだ。貫通扉には指定席車両からの不法侵入を防ぐべく車掌が配置されている。あっという間に乗車率は200%を突破、それでも当然大行列の客を捌き切れず、指定席の通路も開放すると案内があった。窓の外の客がゾロゾロと移動していく。車内放送も続く。
「この列車は青森行きの始発列車です。正直申しまして到着予定時刻を案内することができません」
「現在青森では大規模な停電が発生しており、3万6千世帯で停電しております。しかしJR分の送電は確保いたしました」
「ご乗車がまだの方がいらっしゃいますのでもう少々お待ちください」
ホームに立ったまま、乗らない客もいる。次の列車の自由席の着席を狙うのか、それもなかなか賢いかもと思っていると、22号の次の列車である特急「スーパー白鳥」26号の運休が決まりました、と案内が入る。ホームに残っていた客も乗せ、ようやく函館を出た。13時5分のことである。
津軽線は現在除雪作業中で、沿線6カ所で倒木が支障しており、列車の遅れが見込まれる、通路にいるお客様は御手洗の使用に支障があるから詰めてくれ云々との放送が流れたのを聞いて、意識が飛んだ。寝不足もいいところなので当然である。
さっきまで、こんなに何時間も並んで席確保して何の意味がある、などとほざいていたが、考えが浅すぎた。これは座れないとキツい。
2月21日昼 津軽海峡線 特急「スーパー白鳥」も進まない
起きると木古内に到着直前だ。空は鈍い銀色に変わっているが、雪が降ったりはしていない。退避している上り貨物列車を追い抜いた。牽引機のEH500には運転士が乗っているが、一体いつから居るのだろう。所定では止まらない知内駅にも臨時停車した。ホーム有効長が足らない後部1両はドアカット。乗る客いるのかね。
14時6分、津軽線内は排雪モーターカー3台を投入しているが、まだ運転ができる状態ではなく、この列車には除雪が間に合わないので、青函トンネルを抜けた津軽今別で運転を見合わせる、と放送が流れる。さすがに青函トンネルは高速で突っ走り、14時29分、ついに本州に入った。
14時35分、津軽今別に停まり、また連絡があった。二つ向こうの中沢~蓮田で倒木がさらに発見され、撤去のため送電を一旦止めて作業を行い、その後に除雪をする。会社からのおおよその予想では、1時間以上かかる、とのことだ。通路に立ち並ぶ乗客みんなが、溜息をついたような気がした。いかにも申し訳なさそうな口調で放送が続く。
15時5分、特急券の払い戻しの話と、青森から先の接続列車は、見通しが立つまで何にも分からないという話があり、続いて15時15分、「鉄道とは関係無い話ですが…、新千歳空港では滑走路は2本とも閉鎖されております」という放送を、何故か2回繰り返した。大切な話なんですね、わかります。今のこの状況は、新千歳で飛行機を待つ人間に比べれば、まだましですよってか。
「同じ状況です…(すでに散々繰り返した内容)…模様です」(15時19分)
「新情報はありません。現在蟹田~青森間で列車は運行しておりません」(15時38分)…もういいよ。
15時45分、それはもう深刻そうな感じで放送。
「大変皆様にはありがたくない情報ですが…、復旧見込みが18時を過ぎるという連絡が入りました」
ええええぇぇ。
「代替手段の返答も相当の時間を要します」
数分して、列車に1000人近く乗っていることや、近隣のバスが出払っていることから、結局代替手段は無理との報告があった。
雪はこれっぽっちも降っていない。天気も晴れ基調だ。列車は当分動かないこともわかって、少し運動をしたくなり、Nに荷物を任せてホームに出ることにする。通路の人と荷物を掻き分けてデッキへ。デッキの人と荷物も掻き分けてホームへ。ホームの雪は掻いてあった。
階段を降りてすぐの津軽二股駅のホームを眺める。辺りには紫煙を燻らす人が多い。荷物を抱え、ケータイでタクシーを呼ぶ人がいる。私の所持機を確認すると電波の圏外だ。これだからS○ftbankは!電話BOXに並ぶ十数人は、ケータイを持っていないのでなければ、おそらく田舎での電波の弱さに定評ある某社と契約しているのだろう。現にケータイを見ながら公衆電話のボタンを押している人もいるし。
車掌が階段を下りてきて、16時20~30分頃に、蟹田まで除雪が終了し次第、発車すると伝えてきた。車内に戻る。Nがしびれを切らしたのか、蟹田からタクシーを使って青森に行くことを提案してくる。が、6千円ぐらいかかるだろうと聞いて拒否する。車窓では、待ってられない未来がある客を乗せたタクシーが、南に向かっていく。
客の大半が、早く動かんかなあ、と思っていたであろう16時24分、「気分を悪くされたお客様がおられます。津軽今別駅に救急車を手配いたしました。到着まで12分ほどかかる見込みです」はい、はい、発車は36分以降ね。
「こんなに詰め込んでいるのだから、倒れる人が出るのも当然よね」と客は同情的だ。
16時30分、蟹田駅まで除雪終了のお知らせ。救急車はまだ来ない。
16時37分、救急車は遅れているとの放送。
「何でこのタイミングで体調悪くなったって、言うのかなあ」「私も気分が…(※演技過剰)」などと客は文句を言い始める。
閉鎖環境での被害者の連帯意識でエゴイズムが出てきたなあ、と思っていたら、怒りっぽい調子で「体調が悪いなら、駅に置いていけばいいんだ!」と主張していたオッサンは、周囲の客に駅舎が無いから無理だ、などと言われて黙らされていた。
救急車は一体何をしているのか、と外を見ることができる客が道路を注視する中、ようやく赤色灯を輝かせた白い車がやってきた。だが、救急車到着後も列車はなかなか動かない。津軽今別駅は少し高い所にあるため、津軽二股駅前の広場の様子はわからない。男の子が「もう死んじゃったんじゃないの」と言って、母親に注意される。でもその注意は軽く、周囲の大人も薄ら笑うだけで、不快感は示さない。本音を言う子供は残酷だが、本音を言えない大人はいやらしい。
16時50分に搬送終了の放送が流れ、2時間15分もいた駅を後にした。
14時6分、津軽線内は排雪モーターカー3台を投入しているが、まだ運転ができる状態ではなく、この列車には除雪が間に合わないので、青函トンネルを抜けた津軽今別で運転を見合わせる、と放送が流れる。さすがに青函トンネルは高速で突っ走り、14時29分、ついに本州に入った。
14時35分、津軽今別に停まり、また連絡があった。二つ向こうの中沢~蓮田で倒木がさらに発見され、撤去のため送電を一旦止めて作業を行い、その後に除雪をする。会社からのおおよその予想では、1時間以上かかる、とのことだ。通路に立ち並ぶ乗客みんなが、溜息をついたような気がした。いかにも申し訳なさそうな口調で放送が続く。
15時5分、特急券の払い戻しの話と、青森から先の接続列車は、見通しが立つまで何にも分からないという話があり、続いて15時15分、「鉄道とは関係無い話ですが…、新千歳空港では滑走路は2本とも閉鎖されております」という放送を、何故か2回繰り返した。大切な話なんですね、わかります。今のこの状況は、新千歳で飛行機を待つ人間に比べれば、まだましですよってか。
「同じ状況です…(すでに散々繰り返した内容)…模様です」(15時19分)
「新情報はありません。現在蟹田~青森間で列車は運行しておりません」(15時38分)…もういいよ。
15時45分、それはもう深刻そうな感じで放送。
「大変皆様にはありがたくない情報ですが…、復旧見込みが18時を過ぎるという連絡が入りました」
ええええぇぇ。
「代替手段の返答も相当の時間を要します」
数分して、列車に1000人近く乗っていることや、近隣のバスが出払っていることから、結局代替手段は無理との報告があった。
雪はこれっぽっちも降っていない。天気も晴れ基調だ。列車は当分動かないこともわかって、少し運動をしたくなり、Nに荷物を任せてホームに出ることにする。通路の人と荷物を掻き分けてデッキへ。デッキの人と荷物も掻き分けてホームへ。ホームの雪は掻いてあった。
階段を降りてすぐの津軽二股駅のホームを眺める。辺りには紫煙を燻らす人が多い。荷物を抱え、ケータイでタクシーを呼ぶ人がいる。私の所持機を確認すると電波の圏外だ。これだからS○ftbankは!電話BOXに並ぶ十数人は、ケータイを持っていないのでなければ、おそらく田舎での電波の弱さに定評ある某社と契約しているのだろう。現にケータイを見ながら公衆電話のボタンを押している人もいるし。
車掌が階段を下りてきて、16時20~30分頃に、蟹田まで除雪が終了し次第、発車すると伝えてきた。車内に戻る。Nがしびれを切らしたのか、蟹田からタクシーを使って青森に行くことを提案してくる。が、6千円ぐらいかかるだろうと聞いて拒否する。車窓では、待ってられない未来がある客を乗せたタクシーが、南に向かっていく。
客の大半が、早く動かんかなあ、と思っていたであろう16時24分、「気分を悪くされたお客様がおられます。津軽今別駅に救急車を手配いたしました。到着まで12分ほどかかる見込みです」はい、はい、発車は36分以降ね。
「こんなに詰め込んでいるのだから、倒れる人が出るのも当然よね」と客は同情的だ。
16時30分、蟹田駅まで除雪終了のお知らせ。救急車はまだ来ない。
16時37分、救急車は遅れているとの放送。
「何でこのタイミングで体調悪くなったって、言うのかなあ」「私も気分が…(※演技過剰)」などと客は文句を言い始める。
閉鎖環境での被害者の連帯意識でエゴイズムが出てきたなあ、と思っていたら、怒りっぽい調子で「体調が悪いなら、駅に置いていけばいいんだ!」と主張していたオッサンは、周囲の客に駅舎が無いから無理だ、などと言われて黙らされていた。
救急車は一体何をしているのか、と外を見ることができる客が道路を注視する中、ようやく赤色灯を輝かせた白い車がやってきた。だが、救急車到着後も列車はなかなか動かない。津軽今別駅は少し高い所にあるため、津軽二股駅前の広場の様子はわからない。男の子が「もう死んじゃったんじゃないの」と言って、母親に注意される。でもその注意は軽く、周囲の大人も薄ら笑うだけで、不快感は示さない。本音を言う子供は残酷だが、本音を言えない大人はいやらしい。
16時50分に搬送終了の放送が流れ、2時間15分もいた駅を後にした。
2月21日夕方 津軽線 「青森に少しずつ近づいて運転いたしております」
中小国手前で、排雪モーターカー1台が津軽線を三厩へ向かって走るのを見た。
17時5分、蟹田に到着。いつ動くかわからないから、駅から離れないようにとの連絡と、路線バスは無い、タクシーで青森まで行く場合は7千円から8千円かかる、この列車には7百人から1千人が乗車しているため、代行バスは不可能との放送が流れる。
また外に出た。日が沈みかけていて暗い。側線には津軽線用の気動車が何両も連なって止まっている。駅前と駅舎内は、ケータイ片手の人間でごった返し、タクシーが次々と出ていく。蟹田駅にこれほど活気があることは、普段あり得ないだろう。対して車内はかなり空いた感じだ。
Nは新幹線と東海道線夜行の「ながら」を乗り継いて帰ろうか、などと言っていたが、ついに諦めたらしく、青森に泊まって明日帰る、と宣言した。待ってましたとばかりに、私のケータイで青森駅前の東横インを予約する。
17時38分、除雪が終了し、排雪モーターカー2台は5分前後で待避する、との放送がある。どうも駅と車掌で連絡にタイムラグがあるらしく、「駅によれば」という言い方をしている。
17時53分、蟹田を発車。隣の駅まで少しずつ動かしていくという。「この列車が最初に青森駅に着きます」「青森方に少しずつ近づいて運転いたしております」と、あまり意味を為さない放送。心なしか車掌の息が上がっている気がする。疲れているのだろう。
18時ちょうど、郷沢に停車。18時2分発車。
18時15分にもどこかに停車し、18分に発車。
その後は止まらず、特急並みの速度を出して青森へ向けて一路ひた走った。青森到着前の最後の放送では、上野行き寝台特急「あけぼの」との接続は取れない、大阪行き寝台特急「日本海」とは時間が未定だが接続できる、他の接続は情報不足でわからない、東北線も奥羽線も先ほど運転を再開したところ、などが続いた。
「本日は東北地方の爆弾低気圧の影響により、3時間32分遅れで青森駅に到着いたします。本日は列車大幅に遅れましてご迷惑をおかけいたしました。この列車は八戸行きです。青森で進行方向が変わります…特急料金の払い戻しあります…○※△」車掌の声は裏返ってしどろもどろになっていった。
18時28分、ついに、ようやく青森駅に到着した。
結構な人数が降りる。ここから乗る客も、かなりいるようだ。3番線の電光掲示板には、ちゃんと「特急スーパー白鳥22号 14:51八戸」と表示されている。列車はまだ進むのだ。
「はまなす」で隣合わせた老夫婦ともまた会った。せっかく取った特急「かもしか」の指定券も無駄になり、今日中に秋田へ向かう特急も、残りは「日本海」しか無い。立席特急券で乗れますよ、みどりの窓口は混雑するから、車内で車掌と直談判した方がいいですよ、などとアドバイスして別れた。
東横インにチェックインして、駅前の居酒屋で郷土料理と日本酒を堪能して憂さを晴らし、ホテルに戻って寝た。予約が直前だったからかツインが空いておらず、部屋はダブルである。男二人で。
2月22日 帰途へ
寝像が良ければダブルベットでも寝られるものだ。この日、Nは東北新幹線と東海道新幹線の乗り継ぎでその日のうちに、私は夜の「日本海」で翌日に、それぞれ戻るべき場所に無事に帰り着いた。
北海道や東北の冬は舐めてはいけない。
「フリョ記」(了)
後書き(2015年1月)
わずか6年前の記録なのだが、登場する多くの列車において、臨時化や廃止、あるいは廃止予定の発表がなされていて、月日の移ろいを感じる。
2016年3月以降、北海道新幹線が本格開業すれば、「はまなす」も「スーパー白鳥」も消えて、本稿のような、雪害による大遅延もほとんど無くなることだろう。
中小国手前で、排雪モーターカー1台が津軽線を三厩へ向かって走るのを見た。
17時5分、蟹田に到着。いつ動くかわからないから、駅から離れないようにとの連絡と、路線バスは無い、タクシーで青森まで行く場合は7千円から8千円かかる、この列車には7百人から1千人が乗車しているため、代行バスは不可能との放送が流れる。
また外に出た。日が沈みかけていて暗い。側線には津軽線用の気動車が何両も連なって止まっている。駅前と駅舎内は、ケータイ片手の人間でごった返し、タクシーが次々と出ていく。蟹田駅にこれほど活気があることは、普段あり得ないだろう。対して車内はかなり空いた感じだ。
Nは新幹線と東海道線夜行の「ながら」を乗り継いて帰ろうか、などと言っていたが、ついに諦めたらしく、青森に泊まって明日帰る、と宣言した。待ってましたとばかりに、私のケータイで青森駅前の東横インを予約する。
17時38分、除雪が終了し、排雪モーターカー2台は5分前後で待避する、との放送がある。どうも駅と車掌で連絡にタイムラグがあるらしく、「駅によれば」という言い方をしている。
17時53分、蟹田を発車。隣の駅まで少しずつ動かしていくという。「この列車が最初に青森駅に着きます」「青森方に少しずつ近づいて運転いたしております」と、あまり意味を為さない放送。心なしか車掌の息が上がっている気がする。疲れているのだろう。
18時ちょうど、郷沢に停車。18時2分発車。
18時15分にもどこかに停車し、18分に発車。
その後は止まらず、特急並みの速度を出して青森へ向けて一路ひた走った。青森到着前の最後の放送では、上野行き寝台特急「あけぼの」との接続は取れない、大阪行き寝台特急「日本海」とは時間が未定だが接続できる、他の接続は情報不足でわからない、東北線も奥羽線も先ほど運転を再開したところ、などが続いた。
「本日は東北地方の爆弾低気圧の影響により、3時間32分遅れで青森駅に到着いたします。本日は列車大幅に遅れましてご迷惑をおかけいたしました。この列車は八戸行きです。青森で進行方向が変わります…特急料金の払い戻しあります…○※△」車掌の声は裏返ってしどろもどろになっていった。
18時28分、ついに、ようやく青森駅に到着した。
結構な人数が降りる。ここから乗る客も、かなりいるようだ。3番線の電光掲示板には、ちゃんと「特急スーパー白鳥22号 14:51八戸」と表示されている。列車はまだ進むのだ。
「はまなす」で隣合わせた老夫婦ともまた会った。せっかく取った特急「かもしか」の指定券も無駄になり、今日中に秋田へ向かう特急も、残りは「日本海」しか無い。立席特急券で乗れますよ、みどりの窓口は混雑するから、車内で車掌と直談判した方がいいですよ、などとアドバイスして別れた。
東横インにチェックインして、駅前の居酒屋で郷土料理と日本酒を堪能して憂さを晴らし、ホテルに戻って寝た。予約が直前だったからかツインが空いておらず、部屋はダブルである。男二人で。
2月22日 帰途へ
寝像が良ければダブルベットでも寝られるものだ。この日、Nは東北新幹線と東海道新幹線の乗り継ぎでその日のうちに、私は夜の「日本海」で翌日に、それぞれ戻るべき場所に無事に帰り着いた。
北海道や東北の冬は舐めてはいけない。
「フリョ記」(了)
後書き(2015年1月)
わずか6年前の記録なのだが、登場する多くの列車において、臨時化や廃止、あるいは廃止予定の発表がなされていて、月日の移ろいを感じる。
2016年3月以降、北海道新幹線が本格開業すれば、「はまなす」も「スーパー白鳥」も消えて、本稿のような、雪害による大遅延もほとんど無くなることだろう。