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October 2015

九頭竜湖駅の8620形28651号機

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 九頭竜湖駅の近く、越美北線の車中からよく見える所に、8620形が1両保存されている。越美北線終点での折り返しの短時間に訪れるには、少しばかり遠い場所で、これまで間近で見たことはなかった。先々週、団体旅行で現地を訪れる機会があったので、昼食の間に一人抜けだし、この蒸機を見に行った。

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 8620形28651号機は、越美北線が無煙化された1973(昭和48)年5月まで働いていた機関車だ。1968(昭和43)年10月には、お召し列車を牽引して越美北線を走った。国体を記念した植樹祭にともなうもので、同形の88635号機が先頭本務機、28651号機は重連次位機だった。お召機としての名残か、本機の煙室扉上部の手すり、フロントデッキのつかみ棒や解放テコは、現役時代の最後まで磨き出されていたようだ。保存機となった今も、厚塗りの塗装となってはいるが、ドレスアップした当時の雰囲気が残っている。

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 運転室の銘板は、28651号機が1919(大正8)年12月に汽車製造大阪工場で作られたことを示す。最後の全般検査は、1969(昭和44)年4月の松任工場。廃車は1973(昭和48)年6月16日付けだった。保存場所最寄の九頭竜湖駅の開業は、28651号機が廃車となる前、1972(昭和47)年12月のことだが、貨物営業も転車台もない駅を、現役時代の本機が訪れることはなかった。

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 盗難防止のためだろうか、運転席は金網付きの扉で閉め切られている。テンダーのナンバープレートと、炭水車の容積を示すプレートは付いておらず、跡だけが残る。LP405形ライトも部品の一部がない。

 一部破損はしているが、雪に備えて掛けられた屋根はとても立派で、塗装も手入れもされている。28651号機の、お召し機関車としての威光を残す姿が、末永く保たれることを願う。

(2015年10月撮影) 

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 仕事を終えて深夜に部屋に戻ると、注文していた「ボタン穴から見た戦争 白ロシアの子供たちの証言」と「死に魅入られた人びと ソ連崩壊と自殺者の記録」が届いていた。同時に発注していた、「戦争は女の顔をしていない」はどうなったのかしら、と出版元の群像社のホームページを確認すると、何やら雲行きの怪しいことが書いてあった。ホームページのトップに掲載された、「アレクシエーヴィチの本の販売について」を引く。
 
 著者(アレクシエーヴィチ)の著作権を管理する代理人からの連絡で、小社が有する権利が消失しているため、あらたに増刷することは認められないという通達を受けました。そのため現在、小社で保有する在庫がなくなり次第、販売を終了することになります。」

 この案内には更新日は記載されていないが、おそらく10月21日の掲載だろう。群像社ネットショップのお知らせの更新日が10月21日なっているからだ。

 アレクシエーヴィチの作品は、今後、あらたに版権を取得した出版社から刊行されることになると思います。小社の本をお届けできなかったみなさまには、ぜひ新しい装いの本でアレクシエーヴィチの作品をお読みいただければ、最初に刊行した出版社としても喜ばしいことです。」

 群像社を一人で切り盛りしている島田氏による、なんとも大人な文章ではあるが、なんとなく悲しくもある。 10月8日にスヴェトラーナ=アレクシエーヴィチのノーベル文学賞受賞が発表された直後のインタビューでは、本の売れ行きによっては群像社で増刷するという話が出ていたが、どこかの小さくない出版社が、横から掻っ攫っていったのか。

 手元に届いた「ボタン穴から見た戦争」は、2014年9月26日発行の初版第2刷(初版第1刷は2000年11月10日発行)、「死に魅入られた人びと」は 2005年6月25日発行の初版第1刷だった。「戦争は女の顔をしていない」も、速水螺旋人氏の本(「馬車馬大作戦」だったかな)でその存在を知り、本屋で見かけた時に、さっさと買っておくべきだった。群像社の版が届くのを、首を長くして待っている。
 
(2015.10.22) 

  (追記)
 少し遅れて本日、「戦争は女の顔をしていない」が到着した。2010年12月24日発行の初版第3刷だった(初版第1刷は2008年7月26日発行)。10月26日には、群像社のホームページに「アレクシエーヴィチの本の販売中止について」という告知が追加された。内容は、本3冊すべての販売中止。増刷できないのみならず、在庫分を販売する権利も消失しているという、ドイツのLiterary Agency Galina Dursthoffからの通達があったという。前回の告知では明示されていなかった、著作権の管理人の名前が出てきた。私の手元に届いた本は、販売中止を際どいところで免れたことになる。 

 アレクシエーヴィチの作品で、群像社ではなく岩波現代文庫から出ている「チェルノブイリの祈り 未来の物語」は、2015年ノーベル文学賞受賞の帯をつけて、2015年10月26日付で第4刷が発行されている(初版第1刷は2011年6月16日発行、元は1998年12月、岩波書店より刊行)。岩波書店と群像社とでは、契約の内容が違ったのだろう。

 もう一つ、日経新聞社の「アフガン帰還兵の証言 封印された真実」は、1995年10月に出版されたあと、品切れのままになっている。群像社での販売が終了した3作品ともども、どこからか再び出版されるのだろうか。Galina Dursthoffは、日本のどこの出版社を選ぶのだろうか。
 
(2015.10.27) 

   (さらに追記)
  アレクシエーヴィチの「戦争は女の顔をしていない」と「ボタン穴から見た戦争」の2冊が、2016年2月に岩波現代文庫より刊行されることが、岩波書店のtwitterにて発表された。群像社のご厚意によりという文言があり、訳者は三浦みどり氏のままということなので、文章の中身に変更はないのだろう。まずはめでたい。「チェルノブイリの祈り 未来の物語」と合わせて、岩波現代文庫に3つのアレクシエーヴィチの作品が入ることになる。「死に魅入られた人々」と「アフガン帰還兵の証言 封印された真実」は出ないのかな。

(2015.12.11) 

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