鉄道会社の「抗ウイルス加工」② 全国の実施状況
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2021年1月初頭時点での、日本全国の鉄道会社の「抗ウイルス加工」の実施状況を、WEB上の公開情報によって確認した。
取り上げる鉄道会社は159社である。対象は、ケーブルカーを除いた鉄道車両を保有し、旅客営業を行う鉄道会社とした。結果として、何らかの「抗ウイルス加工」を実施したのは95社(60%)で、「抗ウイルス加工」実施の情報がないのは64社(40%)となった。「抗ウイルス加工」を実施しながら公表していない鉄道会社も存在すると考えられるが、実施の情報を確認できなければ、「なし」としている。
「抗ウイルス加工」を実施した95社のうち79社において、製品名を記した。ただし、プレスリリースや報道において言及がないため、鉄道車両に掲示されるステッカーのデザイン等から推定したところもある。「抗ウイルス加工」の実施情報はあるものの、製品名が全く不明な鉄道会社は16社となっている。
鉄道会社に採用された「抗ウイルス加工」製品は、判明したものだけで20種類を超える。複数社に採用された製品としては、20社に採用された「空気触媒セルフィール」以下、「エコキメラ」「銀担持酸化チタン触媒」が各8社、「YAMシリーズ」「レコナガード」が各6社、「キノシールド」「アドバンスコート」が各4社、「AT-254チタンコート」「Dr.ハドラス」が各3社、などとなっている。中小私鉄においては、その地方に所在する会社が取り扱う「抗ウイルス加工」を実施し、結果として1社のみの採用となっている製品も多い。
以下、JR、北海道、東北、関東、甲信越、中部、北陸、関西、中国、四国、九州・沖縄、の11のグループに分けて、「抗ウイルス加工」の施工状況を列記する。
【JR】
・JR北海道:なし
・JR東日本:なし
・JR東海:なし
・JR西日本:「空気触媒セルフィール」(在来線全車両)
・JR四国:なし
・JR九州:なし
JR西日本を除いては「抗ウイルス加工」を実施していない。報道によれば、JR西日本は新幹線にも「空気触媒セルフィール」の施工を検討する旨を明らかにしていたが、今のところ実施の様子はない。
【北海道】
・札幌市営地下鉄:「空気触媒セルフィール」
・札幌市電:「空気触媒セルフィール」
・道南いさりび鉄道:「YAMシリーズ」
・函館市電:なし
【東北】
・青い森鉄道:「無光触媒エコキメラ」
・津軽鉄道:なし
・弘南鉄道:なし
・IGRいわて銀河鉄道:実施(製品名不明)
・三陸鉄道:「無光触媒クリーンエアガード」「光クリーンコート」
・秋田内陸縦貫鉄道:なし
・由利高原鉄道:なし
・山形鉄道:なし
・仙台空港鉄道:なし
・仙台地下鉄:「アドバンスコート」
・阿武隈急行:「無光触媒エコキメラ」
・福島交通飯坂線:「無光触媒エコキメラ」
・会津鉄道:「キノシールド」
・野岩鉄道:「銀担持酸化チタン光触媒」
【関東】
・東武鉄道:「銀担持酸化チタン光触媒」
・西武鉄道:「YAMシリーズ」
・京成電鉄:実施(Ag+TiO2とあるが、製品名不明)
・京急電鉄:実施(製品名不明)
・東急電鉄:「銀担持酸化チタン光触媒」
・京王電鉄:実施(製品名不明)
・小田急電鉄:実施(製品名不明)
・相模鉄道:実施(製品名不明)
・東京メトロ:「シルフィーミストAG」
・関東鉄道:「YAMシリーズ」
・わたらせ渓谷鉄道:「アドバンスコート」
・上信電鉄:「アドバンスコート」
・上毛電鉄:「アドバンスコート」
・真岡鉄道:「ダイヤニウム」
・秩父鉄道:なし
・流山鉄道:「銀担持酸化チタン光触媒」
・鹿島臨海鉄道:「銀担持酸化チタン光触媒」
・つくばエクスプレス:「銀担持酸化チタン光触媒」
・ひたちなか海浜鉄道:なし
・銚子電鉄:「光触媒プロテクトライト」
・小湊鉄道:「次世代光触媒クオクリア」
・いすみ鉄道:「光触媒レコナガード」
・北総鉄道:実施(Ag+TiO2とあるが、製品名不明)
・新京成電鉄:「次世代光触媒クオクリア」
・山万ユーカリが丘線:なし
・東葉高速鉄道:実施(製品名不明)
・千葉都市モノレール:なし
・舞浜リゾートライン:「Dr.ハドラス」
・埼玉新都市交通:なし
・埼玉高速鉄道:「銀担持酸化チタン光触媒」
・新交通ゆりかもめ:なし
・東京都交通局:なし
・東京モノレール:「銀担持酸化チタン光触媒」
・東京臨海高速鉄道:なし
・多摩都市モノレール:なし
・横浜高速鉄道:実施(製品名不明)
・横浜市営地下鉄:なし(現状では実施の予定なし)
・横浜シーサイドライン:実施(Ag+TiO2とあるが、製品名不明)
・伊豆箱根鉄道:「YAMシリーズ」
・箱根登山鉄道:「YAMシリーズ」
・湘南モノレール:「Dr.ハドラス」
・江ノ島電鉄:なし
乗客の「安心感」の醸成の効果を無視できないためか、関東大手私鉄各社はいずれも何らかの「抗ウイルス加工」を実施している。ただ、製品名を明らかにしていない会社が多い。また、関東の中小私鉄では、同一のグループ会社に属していると、同じ「抗ウイルス加工」を実施する傾向がみられる。
【甲信越】
・富士急行:「無光触媒エコキメラ」
・長野電鉄:なし
・松本電鉄:なし
・上田交通:なし
・しなの鉄道:なし
・えちごトキめき鉄道:なし
・北越急行:なし
甲信越の鉄道会社では、「抗ウイルス加工」の実施は低調である。
【中部】
・伊豆急行:「無光触媒SKEBE-783」(「無光触媒エコキメラ」と同一?)
・岳南電車:「空気触媒セルフィール」
・大井川鉄道:「YAMシリーズ」
・静岡鉄道:「Ventil光触媒」
・天竜浜名湖鉄道:「無光触媒エコキメラ」
・遠州鉄道:なし
・豊橋鉄道:なし
・愛知環状鉄道:なし
・名古屋鉄道:なし
・リニモ:なし
・東海交通事業城北線:なし
・名古屋ガイドウェイバス:なし
・名古屋ガイドウェイバス:なし
・あおなみ線:なし
・名古屋市営地下鉄:なし(検討)
・明知鉄道:「イオニアミストPro」
・長良川鉄道:「イオニアミストPro」
・樽見鉄道:「イオニアミストPro」
・養老鉄道:「イオニアミストPro」
・四日市あすなろう鉄道:「空気触媒セルフィール」
・三岐鉄道:なし
・伊勢鉄道:「Dr.ハドラス」
・伊賀鉄道:「空気触媒セルフィール」
愛知県の鉄道会社では、新聞の取材に対し名古屋市営地下鉄が「抗ウイルス加工」の実施の検討を回答しているものの、現時点ではJR東海や名古屋鉄道以下、1社たりとも「抗ウイルス加工」を実施していない。
【北陸】
・あいの風とやま鉄道:「光触媒レコナガード」
・黒部峡谷鉄道:なし(2021年に実施を検討)
・富山地方鉄道:なし
・万葉線:「サンブレス光触媒」
・IRいしかわ鉄道:「光触媒レコナガード」
・北陸鉄道:なし
・福井鉄道:「空気触媒セルフィール」
・えちぜん鉄道:「空気触媒セルフィール」
【関西】
・近畿日本鉄道:「SEIKADO SRW-30」(「無光触媒エコキメラ」と同一)
・京阪電鉄:なし
・阪急電鉄:「空気触媒セルフィール」「無光触媒エコキメラ」「新光触媒アヴァンコート」
・阪神電車:「AT254チタンコート」
・南海電鉄:「空気触媒セルフィール」
・南海電鉄:「空気触媒セルフィール」
・近江鉄道:なし
・信楽高原鉄道:なし
・京都丹後鉄道:「空気触媒セルフィール」
・叡山電車:実施(製品名不明)
・京都市営地下鉄:「ラーフエイド」
・京福電鉄:「新・環境触媒クリーンフィックス」
・嵯峨野観光鉄道:「キノシールド」
・紀州鉄道:なし
・和歌山電鉄:「空気触媒セルフィール」
・水間鉄道:なし(「吊り輪カバー」を使用)
・泉北高速鉄道:「空気触媒セルフィール」
・阪堺電車:「空気触媒セルフィール」
・大阪メトロ:「空気触媒セルフィール」
・大阪モノレール:「空気触媒セルフィール」
・北大阪急行電鉄:「空気触媒セルフィール」
・山陽電車:「AT254チタンコート」
・神戸電鉄:「AT254チタンコート」
・神戸市営地下鉄:実施(製品名不明)
・神戸新交通:実施(製品名不明)
・能勢電鉄:実施(製品名不明)
・北条鉄道:なし
コロナ禍の以前から大阪メトロや大阪モノレールなどが採用していた影響だろうか、関西ではJR西日本を皮切りに、「空気触媒セルフィール」が一大勢力を築いている。
【中国】
・智頭急行:「空気触媒セルフィール」
・岡山電気軌道:「空気触媒セルフィール」
・水島臨海鉄道:「空気触媒セルフィール」
・井原鉄道:「光触媒レコナガード」
・アストラムライン:なし
・広島電鉄:なし(「Etak配合消毒剤」による消毒)
・若桜鉄道:「光触媒レコナガード」
・一畑電車:実施(製品名不明)
・錦川鉄道:なし
【四国】
・高松琴平電気鉄道:「チタンコートアルファ」
・土佐くろしお鉄道:「キノシールド」
・とさでん交通:なし
・伊予鉄道:なし
【九州・沖縄】
・門司港レトロ観光線:なし
・北九州モノレール:「光触媒トヨコート」
・平成筑豊鉄道:なし
・筑豊電鉄:「ナノ構造制御型次世代光触媒」
・西日本鉄道:なし
・西日本鉄道:なし
・福岡市地下鉄:なし
・甘木鉄道:「光触媒レコナガード」
・松浦鉄道:なし
・長崎電気軌道:「W-CAREコート」
・島原鉄道:なし
・熊本電鉄:「キノシールド」
・熊本市電:実施(製品名不明)
・くま川鉄道:なし
・南阿蘇鉄道:なし
・肥薩おれんじ鉄道:なし
・鹿児島市交通局:なし
・ゆいレール:なし
今後、各鉄道会社の「抗ウイルス加工」の実施状況を適宜アップデートするとともに、不明となっている「抗ウイルス加工」の製品名を明らかにしていきたい。
(2021年1月10日日曜日・初稿)