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 12月中旬、リフレッシュ休暇と称して函館に向かった。前夜から降り続けた雪の影響で、この日の朝の函館市電は遅れ気味。電停は人の手で、道路は建設機械で除雪が行われていた。湯の川から市電5系統に乗車していると、軌道の除雪を担当する「ササラ電車」と行き違った。慌てて撮った写真を見返すと、こびりついた雪で読みにくいものの、側面に「3」とあった(上写真)。
 「ササラ電車」は、雪国の路面電車に特有の車両で、日本で走るのは札幌市電の4両と函館市電の2両のみ。函館のものは、車体の前後に斜め45°の角度で回転軸を持ち、各軸には竹ヒゴ200本を束ねた「ササラ」が432束植え付けられている(8列×6群×9束=432束に見えるのでこう書いたが、450束と書いているサイトもある)。回転する「ササラ」を路面に押し付け、軌道上の雪を進行方向左手にはね飛ばす仕組みだ。ロータリーブルーム(rotary broom=回転箒)と呼ばれるこの装置は、路面電車の線路の凹みに溜まる雪も確実にかき出し、アスファルトを傷めることもない。
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 5系統終点の函館どつく前に着くと、電停の奥に雪まみれの車両が止まっていた。側面にはうっすら「4」の数字が浮き出ており、先の「3」とは別の、函館のもう1両の「ササラ電車」だった。湯の川行きの5系統が出てしばらくして、「4」は「ササラ」を回しながら動き出した。軌道の雪が跳ね除けられていく。掃かれた雪が茶色なのは、電車のブレーキの鉄粉によるものか、それとも単なる泥の汚れか。「4」は雪煙を上げながら走り去った。
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 次の5系統に乗って十字街の電停まで行くと、湯の川方の本線上に先程の「4」が止まっていたが、すぐに渡り線を通って目の前にやって来た。間近で見ると、抜けたか折れたかした竹棒が何本か、ブルーム上部に溜まった雪に引っかかっている。車体が雪まみれなのは暖房を装備していないためで、車内は外気温と同じ零度以下ということになる。乗務員も寒かろう。

(函館、2016年12月)